晴れて暑い日には、学校や自治体の町内放送で「光化学スモッグ注意報が発令されました。屋外での激しい運動は控え、屋内でお過ごしください」といったアナウンスが流れていた記憶がある方もいらっしゃるかもしれません。しかし、最近ではそうした放送をあまり聞かなくなったと感じる方もいるのではないでしょうか。
今回は、そもそも光化学スモッグとはなんだったのか、最近の光化学スモッグ注意報の発令状況、発令情報をあまり聞かなくなったと考えられる背景について解説します。
最近、光化学スモッグ注意報を聞かないのはなぜ?
かつて頻繁に発令されていた光化学スモッグ注意報ですが、原因は後述しますが、光化学オキシダントと呼ばれる有害な物質が生成されることによる大気汚染です。近年、発令回数は減少傾向にあります。その背景には、いくつかの要因が考えられます。

- 自動車排出ガス対策の進展: 1990年代以降、自動車の排ガス規制が強化され、触媒コンバーターの普及などにより、光化学スモッグの原因となる窒素酸化物(NOx)や揮発性有機化合物(VOC)の排出量が大幅に削減されました。これが、光化学スモッグの発生を抑制する大きな要因となっています。
- 工場のばい煙対策の強化: 工場からのばい煙に含まれる汚染物質の排出規制も強化され、大気汚染の改善が進んでいます。
- 気象条件の変化: 光化学スモッグは、日差しが強く、気温が高く、風が弱いといった特定の気象条件下で発生しやすいため、年ごとの気象条件の変化も発令頻度に影響を与えている可能性があります。
- 監視体制の変化: 大気汚染の常時監視体制は現在も続いていますが、注意報の発令基準や情報伝達の方法が以前と変わっている可能性も考えられます。以前は広範囲に町内放送などで注意喚起が行われていましたが、現在ではよりピンポイントな情報提供に移行しているかもしれません。自治体のウェブサイトや防災情報メールなどで発令状況を確認できる場合があります。
ただし、注意報の発令頻度が減ったとはいえ、光化学スモッグのリスクが完全になくなったわけではありません。依然として、特定の気象条件下では注意報が発令されることもあります。
光化学スモッグとは?その発生メカニズムと危険性
では、そもそも光化学スモッグとはどのような現象なのでしょうか?
光化学スモッグは、工場や自動車などから排出される窒素酸化物(NOx)や炭化水素(VOC:揮発性有機化合物)が、強い太陽光(紫外線)を受けることで光化学反応を起こし、オゾン(O3)やアルデヒド、PAN(パーオキシアセチルナイトレート)などの光化学オキシダントと呼ばれる有害な物質を生成することで発生する大気汚染の一種です。
この光化学オキシダントの濃度が高くなると、以下のような人体への悪影響を引き起こす可能性があります。
- 目の刺激: 目がチカチカする、痛む、涙が出る
- 喉の刺激: 喉が痛む、咳が出る
- 呼吸器への影響: 息苦しい、呼吸困難
- その他の症状: 頭痛、吐き気、手足のしびれ(重症の場合)
特に、呼吸器系の疾患を持つ方や、子ども、高齢者、運動をしている人は影響を受けやすいとされています。また、植物にも被害を与えることがあります。
光化学スモッグが発生しやすいのは、日差しが強く、気温が高く、風が弱いといった気象条件が重なる夏場の昼間です。遠くの景色が白く霞んで見えるような状況では、光化学スモッグが発生している可能性があります。
光化学スモッグから身を守るために、今できること
光化学スモッグ注意報が発令された場合、またはその兆候が見られる場合は、以下の点に注意して行動しましょう。
- 屋外での激しい運動を控える: 特に、呼吸が激しくなるような運動は避け、屋内での活動に切り替えましょう。
- 不要な外出を控える: 高濃度の光化学オキシダントにさらされる時間を減らすため、できるだけ屋内で過ごしましょう。
- 窓を閉める: 屋内にいても、窓を開けていると汚染された空気が入ってくる可能性があります。窓を閉めて、外気の侵入を防ぎましょう。
- 体調が悪くなったら安静にする: 目や喉に痛みを感じたり、咳が出たりするなど、体調に異変を感じたら、すぐに屋内で安静にし、洗眼やうがいをしましょう。症状が改善しない場合は、医療機関を受診してください。
- 最新の情報を確認する: 自治体のウェブサイトや防災情報などを確認し、光化学スモッグの発生状況や注意報の発令状況を把握するように努めましょう。
光化学スモッグ注意報の発令頻度は減ったかもしれませんが、その危険性がなくなったわけではありません。大気の状態や気象条件によっては、今後も発生する可能性があります。正しい知識を持ち、適切な行動をとることで、光化学スモッグの被害から身を守りましょう。
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