近年、自然災害が激甚化・頻発化する中で、その対策として「グリーンインフラ」という考え方が注目されています。今回は、グリーンインフラがなぜ防災に役立つのか、その起源はどこにあるのか、そして現在どのような計画が進められているのか、未来に向けてどのような展望があるのかを解説します。
グリーンインフラとは?
グリーンインフラとは、自然環境が持つ多様な機能を、社会インフラ(道路、堤防、下水道など)の整備や土地利用に積極的に活用するという考え方です。具体的には、以下のようなものがグリーンインフラとして挙げられます。
- 森林: 土砂災害の防止、保水、洪水緩和
- 河川: 自然な蛇行や多様な生物の生息環境を保全することで、洪水を抑制
- 湿地: 雨水を一時的に貯留し、洪水を緩和
- 公園、緑地: 都市部の気温上昇を抑制、雨水を浸透させ、下水処理の負担を軽減
- 街路樹: 倒木対策を行い、都市の美観を向上
グリーンインフラの防災における有用性
グリーンインフラは、従来のコンクリートなどで固める「グレーインフラ」と比べて、以下のような点で防災に役立つとされています。
- 自然の力を活用: 森林の保水力や湿地の貯水力など、自然が持つ力を最大限に活用することで、持続可能で環境負荷の少ない防災対策を実現します。
- 複数の効果: 防災だけでなく、景観の向上、生物多様性の保全、CO2吸収、ヒートアイランド現象の緩和など、多様な効果が期待できます。
- 地域住民の参加: 地域住民が計画から維持管理まで参加することで、地域への愛着が深まり、防災意識の向上にもつながります。
ただし、グリーンインフラは万能ではありません。グレーインフラと組み合わせ、それぞれのメリットを活かすことが重要です。
グリーンインフラの起源と現在
グリーンインフラの概念は、1990年代後半にアメリカで発案され、欧米を中心に広がりました。日本では、2013年頃から導入され始め、2015年の国土形成計画で初めて国の計画に盛り込まれました。
現在、国土交通省を中心に、グリーンインフラの推進戦略が策定され、以下のような取り組みが進められています。
- グリーンインフラ官民連携プラットフォームの設立: 官民が連携してグリーンインフラを推進するためのプラットフォームを設立し、情報共有や技術開発を促進しています。
- グリーンインフラ大賞の創設: グリーンインフラに関する優れた取り組みを表彰し、その事例を広く紹介しています。
- 地方創生との連携: グリーンインフラを地方創生の手段として活用し、地域の活性化にもつなげる取り組みが進められています。
グリーンインフラの未来
グリーンインフラは、今後ますます重要性を増していくと考えられます。気候変動による自然災害の激甚化、少子高齢化による人口減少、インフラの老朽化など、日本が抱える様々な課題の解決に貢献することが期待されています。
未来に向けては、以下のような計画が進められています。
- グリーンインフラの導入プロセス・実装手法の規格化と枠組みの構築: グリーンインフラをより効率的に導入するための基準やガイドラインを作成する動きがあります。
- 地方創生を実現する地域産業連携GIモデルの創出: 各地域の特性を活かしたグリーンインフラのモデルを構築し、全国への普及を目指します。
- ネイチャーポジティブ経済への移行: 自然環境を保全・回復させながら経済成長を目指す「ネイチャーポジティブ経済」への移行に貢献するものとして、グリーンインフラが注目されています。
グリーンインフラは、私たちの暮らしをより安全で、より豊かなものにするための重要な鍵となるでしょう。今後の動向に注目していきましょう。
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